7月26日読書記録
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津村 「よくしようや」ってなんでみんな言うんですかね。
深澤 「人間は日々進歩して向上していくもの」だっていう「思想」が、明治維新以降
欧米から入ってきたと私は思ってるんです。とくに高度経済成長期からバブル期にかけ
てアメリカからどんどん来たんですよ。それで、女性誌を中心に、「輝こう」とか「毎
日よくなろう」みたいなことが言われ始めて、勝間和代さんが「毎日0.2%ずつよく
なろう」とか、とうとう数字を出してきた。ここまで来たか!と思いましたね(苦
笑)。一緒にして申し訳ないですけど、津村さんも私もいいところはちょっとしかない
んだけど、そのちょっとを上手に使ってここまでやってこれた気がします。
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深澤 女性は特に「自分探し」が好きですけど、私は「本当の自分は自分の中にはいな
い」し「本当の自分はたったひとりじゃなくて、誰と関わるかによっていろいろ変わ
る」と思います。
~中略~
深澤 フェイスブックは非常によくできてるけど、あれが大変なのは、実名なので、
「濃淡があるいろんな人間関係の相手に、等しい自分を伝えなきゃいけない」ってこ
と。仕事の友だちも、幼稚園の友だちも、大学の友だちも、すべてに同じ情報や感情を
伝えるのは無理でしょう、それぞれの共有しているものが違うから。 ~中略~ 誰も
が「同じ私」を知ったら逃げ場がなくなると思うんです。人間関係って平等じゃないか
らね。大人になるって人付き合いを上手に差別化することだと思うんです。
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深澤 とにかくみんな、それぞれ病んでるところがあるんだから、みんなが「病んでる
部分」を持ち合えば「病んでてもいいや」ってなると思うんですよ。「みんなおかしく
ていい」っていうのがネットなのに、「見栄日常」を発信して「私はちゃんとして
る」ってことをシェアさせようとすると疲れると思う。
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深澤 私が女子会が苦手なのは、ネタを仕込まないで愚痴しか言わないことが多いから
なんですよね。だからテーマのある会にしたらいいと思うんです。 ~中略~ とにか
くネタなしに人に会わないようにする。彼氏だろうと、家族だろうと、友だちだろう
と。ネタなしに人に会うのは怠慢だと思う。人とつきあうときは、「ありのままの自
分」じゃないほうがいい。ありのままの自分って、準備してないってだけだから。
津村 飲み会も楽しいですが、外を歩くのはより好きですね。おすすめします。歩くこ
とによって次々と情報が入ってくるから、話題にも困らないし、見ているもののことを
話すので、会話の袋小路にもほとんど入らない。食事とお酒だけしか目の前にないと、
よほど話題の蓄積がある人同士じゃないと、観念的な方向に行きやすいところもあると
思いますよ。お互いの嫌なところが目に付いたり、反対に無駄にほめ合って疲れたり。
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深澤 お互いでお互いの気晴らしができればいい。あとは、「こんなにダメな私とつき
あってくれてありがとう」というのと、「こんなダメな私なんだから友だちもダメにき
決まってる」というのと、両方あるんですよ。傷のなめあいをすることも時と場合に
よってはいいと思うんですよ。ずうっとなめあっていたらダメだけど、~中略~やっぱ
り「尊敬しあえる友人」みたいなへんな理想を持ち込まないということが大事ですね。
津村 (笑)。尊敬できるから友だちになるんじゃないですしね。気がついたら友だち
だったってだけですから。
深澤 とくに一緒に歳をとっていくとほんとわがままになっていくし、許せないことも
増えてきたりするし ~中略~ 大ざっぱに「みんな大変なんだな」と思うことですよ
ね。
津村 それぞれ大変ですよね。それぞれ学びの段階とか時期が違ってて。その人は今、
自分からしたら終わったような問題で悩んでるけど、反対に自分がまだ入り口にも立っ
ていない物事を理解しているかもしれない、とかありますし、あの人はこの年なのにこ
うで!みたいに、自分の物差しで全部測ったらダメですよね。
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